2015年9月3日木曜日

上達しない練習---その1.自分の打ち方は自分の自由にはならない

●打ち方を意識的に直そうとする

「自分は無意識的な運動でボールを打っている」などと考えている人は、テニスプレイヤーの中でも非常に少ないようです。

ということは、ほとんどのプレイヤーは「自分は意識的にボールを打っている」と思っているはずです。

ですから、自分の打ち方を意識的に直そうとするのが、上達のためのごく普通の取組です。

それが「打ち方を工夫する」ということで、そこに手を付けずに、ただ漫然とボールを打っているだけでは絶対にうまくならないと信じている方も多いようです。

「同じ失敗を何度も繰り返すな!もっと考えて打て!」という指導もよくあります。

そのため、ボールを打つときの身体の動かし方について、いろいろ勉強したり工夫したりするわけです。

でも、これまで、そうした努力をたくさん重ねてきたのに、あまり効果が上がっていないと感じている方は意外に多いのではないでしょうか。

もしそうであれば、「自分がボールを打つときの動きは、もしかすると、自分の自由にはならないのかもしれない」と一度は疑ってみても良いでしょう。

そして、「自分がボールを打つときの動きは、自分の自由にはならない」というのはまぎれもない現実です。

●ボールが主導権を握っている

その理由はとても単純で、「テニスは飛んで来るボールを打ち返すスポーツ」だからです。

飛んで来るボールの動きにプレイヤーの身体の動きを合わせなければ、まともに打ち返すことはできないので、動きの主導権は常に「飛んで来るボール」が握っています

プレイヤーは飛んで来るボールの動きに一切文句を言うことなく、黙々と従うしかないわけです。
(たまに、相手のボールに対して「遅すぎる!」などと文句を言う人が居ますが、これは全くのおカド違いです。)

こんなことは、わざわざ言うまでもない単純な現実ですが、それにもかかわらず、多くのプレイヤーは自分の動きのほうをメインに考えて、そこを意識的に改善しようと努力しています。

でもそれはまるで、「止まっているボールを打つスポーツのような取組」になっていることが少なくありません。

飛んで来るボールに合わせて動きが毎回適切に変わらなくてはならない状況なのに、そこで、「ああしよう」「こうしよう」と自分を中心に考えて動こうとするのは、どう考えてもおかしな対応です。


さらに、「自分は意識的にボールを打っている」と思っているプレイヤーにとっては、
-----「打つ前のボールの状態を見極めて、それに適したスイングを選択して実行するという作業はゼロコンマ数秒という、ほんの一瞬のうちに行われている」-----
などということは全くの想定外のことなので、「考えて打てば打ち方を直せる」と単純に考えるわけです。

ボールが主導権を握っていることについては、経験を積んだ身体のほうはしっかり理解していて、いつでも瞬時に対応できるような体制が整っているのですが、「自分の身体の動きは常に自分の意識の管理下にある」と考えているプレイヤーは、ボールに主導権があることを忘れがちで、自分の動き主導で問題を解決しようとします。

■ミスが出るのは打ち方が悪い

そして、多くのプレイヤーは「ミスが出るのは打ち方が悪いからだ」と考えて、「それを直せばミスが防げる!」と思うのですが、この中の前半部分は正しくて、後半部分は間違っています。

すなわち、「ミスが出るのは打ち方が悪い」というのは正しいのですが、「打ち方を直せばミスが防げる」というのは間違いです。


自分の打球が変なところに飛んで行ったのは、そのときのボールの状況に対して身体の動きが適切ではなかったからであり、そういう意味で「ミスが出るのは打ち方が悪い」という判断は正しいわけです。

でも、「だから、打ち方を直せば良い」と考えるのは早計です。

なぜなら、「ボールを打ったときの身体の動きが適切ではなかった」というのが動かせない事実だとしても、「適切でなかった」のは「その状況に対して」という限定条件が付くわけで、いついかなるときでも不適切ということではありません。

「飛んで来るボールの動きに対して、そのときの身体の動きが適切でなかった」ということです。

ですから、ミスショットのあとに打ち方を直そうとするのは、クイズ問題の解答を間違えてしまったときに、次の問題に対して前の問題の正解を答えようとするのと同じです。

「前回と同じ問題が次に出るはずはないのに」ということです。

ミスショットのあとに、「こうやって振れば良かった」というように素振りを繰り返すシーンはよく見受けます。

でも、そのスイングがどんなに完璧に修正されても、その修正されたスイングが次のショットに適切である可能性は限りなく低いわけです。

飛んで来るボールの状態は毎回違うので、その「飛んで来るボールを目的のところに打ち込むのに適した打ち方」も毎回違います。

「飛んで来るボールを目的のところに打ち込む」という「正しい結果を得るのに適した打ち方」のことを「正しい打ち方」だと言うのであれば、それは毎回違うわけです。

ですから、いろいろなクイズ問題に共通の正解が無いのと同じように、どんな状況にも適応できる共通の「正しい打ち方」などはありません。

いつでも万能の「正しい打ち方」無いのと同じ理由で、「間違った打ち方」も無いと言えます。

なぜなら、その打ち方でミスが出たのは、その状況に合っていなかったからであり、その打ち方が正解である状況が今後も絶対に訪れないとは言い切れないからです。

フェデラーが身体の正面に来てしまったスライスサーブを、ラケットが振れない状態で前に押し返すようにリターンするシーンを見たことがありますが、そんなカッコ悪い打ち方も、その状況では正しい打ち方と言えるでしょう。

「打ち方」というものについて、こんなふうに柔らかくとらえると、ボールを打つときの身体の窮屈さが減るかもしれません。


■打ち方を直してもミスは防げない

打ち方を直してもミスは防げません。

なぜなら、「ミスショットはボールとのミスマッチによって発生する」からです。

「ミスマッチ」とは、「打つ前のボールの状態」とスイングが合っていないということです。

そして、「合っていない」というのは、動きだけでなくタイミングも含まれます。

「高速で動いているボール」と「プレイヤーの動き」が合っていない場合、ショットが成功する確率は限りなくゼロに近づくわけです。


ゼロコンマ数秒という、ほとんど瞬間的とも言える状況で、打つ前のボールの状態を見極めて、その状態に合ったスイングを選択して実行するという作業は人間ワザとは思えないくらい難しいので、何回かやれば必ず失敗します。

そして、その「失敗」は、動きの時間が合わなかったか、動きの内容が合わなかったかのどちらか、あるいは、その両方です。

ですから、そこで打ち方をいろいろ工夫するのは、かなり場違いな対応と言えるのではないでしょうか。

飛んで来るボールが要求する打ち方を素早く見つけて、素早く実行することが大事なのに、ボールが飛んで来る前に自分勝手に「正しい打ち方」を決めて、それを実行しようとするのは、現実離れの対応だと言えます。


そうした対応を続ける限りミスマッチが減る可能性は無いのですが、逆に、そうした対応によってミスマッチが増える可能性があります。

ミスを防ごうとして打ち方を気にしながらボールを打つのは、ボールより「打ち方」のほうが気になっている状態、言い換えれば、気が散っている状態なので、ボールの把握がルーズになります。

そして、テニスは高速で動き続けるボールに身体の動きを対応させるスポーツなので、ボールの把握がルーズな状態ではすぐにミスが出ます。


もっと言えば、無意識的な運動によって信じられないくらい難しいことを身体がやっている最中に、プレイヤー自身の「こうしなさい」という命令が割り込んでくるのは、ジャマ以外の何ものでもありません。

プレイヤーが自分の身体の動きに意識を向けたとたんに「無意識的な運動」のスイッチが切れてしまうので、自然な動きで打てる状態ではなくなってしまいます。

そして、「失敗が減らないのは打ち方の改善がうまくいっていないからだ」と考えて、さらに横ヤリ的な打ち方の指示を強めることが多いのですが、それは、自分で自分の首を絞めるのと同じです。

苦労してせっかく手に入れた「高度で複雑な無意識的運動」を放棄して、初心者のような「意識的運動」でボールを打とうとすれば、初心者のようなミスが出るのは当然です。


テニスの一番の難しさは「動いているボールを打つ」ことにあります。

高速で動いているボールにきちんと対応できるかどうかが勝負の分かれ目なので、ゴルファーがスイングを気にするように、ラケットの振り方ばかりを気にするのは見当違いだと言えます。

●ミスマッチを減らすために必要なこと

ここで、誤解を防ぐために付け加えますが、「打ち方を直す必要など全く無い」と言っているわけではなく、「ミスを防ぐために打ち方を直そうとするのは見当違い」と言っているのです。

多くのプレイヤーにとって、打ち方を直すことは必要です。
でもそれは、「ミスを防ぐため」ではなく、「もっと良いショットを打つため」です。

「何だそれは」と言われそうですが、この2つは全く違います。

ミスショットは「ボールの動きとプレイヤーの動きのミスマッチ」によって発生するので、ミスを防ぐには、それを減らすことが必要です。

そして、ミスマッチを減らすために必要なのは、ボールを打つときの身体の動きに何らかの固定的なテーマを作って、それを実行しようとすることではありません
(先述したように、それをやると逆にミスマッチは増えます)

ボールの動きと身体の動きのミスマッチを減らすために必要なのは、具体的には以下のような取組です。

その2.ミスマッチを減らすために必要なこと(作成中)

そして、体の負担を減らしてもっと勢いのあるショットを打つには打ち方の訓練が必要です。

その3.打ち方を直す方法(作成中)

でも、せっかく上達しても本人には自覚できません。自覚しようとする取組では上達しません。

その4.上達は自覚できない(作成中)

 
 

以下はこの「無意識」関係の記事グループの構成です。

テニスラケットの良し悪しは自分ではわからない


「打つ前のボールの状態に合わせたスイング調整」






「上達しない練習」---その1.自分の打ち方は自分の自由にはならない(現在のページ)
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