またまた前回からだいぶ時間が経ってしまいましたが「日本人プロに挑戦して欲しい事」のシリーズ第三弾です。もちろん技術的な話ではありません(笑)。
プロテニスビジネスには選手もファンも共により盛り上がって経済的にも活性化できる事が沢山あると思っています。他のプロスポーツに大きく離されているので。ITFも既に大きな部分で動いていて来年大会システムが変わります。そんな状況の中で、日本人選手にチャレンジしてほしい事のボクなりの提案です。
以前書いた記事へのリンクを含めて、こちらが現在のリストです。今回は「取り組んでいることを伝える」です。
1. 取り組んでいることを伝える
2. 地元を作り地域との繋がりを強める
3. 積極的にスポンサー営業する
4. ファンクラブをつくる
5. 個人事業主であることを理解する
取り組んでいることを伝える
最近SNSが一般になって、インスタグラムやツイッター、フェイスブックなどで、かつては見えなかったツアー選手の日々の生活がかなりみられるようになりました。移動中の風景や滞在しているホテル、摂っている食事、そしてたまのオフの様子などもファンにとっては最高の楽しみです。
ただ、それ以前に、やっぱりテニス選手はアスリートだし、テニス選手なんです。ファンの多くはテニスをする人たちです。なので、一番知りたいことは、今どんなことを目指して、どんな気持ちで、どんな身体で、どんなことに取り組んでテニスをしているかです。
例えば、ランキング100位切ることを目指しているとか、次の大会で3R突破を目指しているとか、とにかく今は優勝したいとか、怪我をしたので1遠征2大会で最低5試合はしっかり戦い抜きたいと思っているとか、サーブを大きく改善しているので実戦でどれだけ練習成果を出せるかが気になっているとか、選手一人一人、長い1年のツアー生活でその時々の細かい目標があると思うんです。それをファンは知りたいし、それを知った上で観る試合は、見方が全く変わってより面白くなります。
テニスの他のプロスポーツと大きく違い、全ての試合がトーナメントなので、優勝者以外は必ず負けるという結果がついてしまいます。錦織が大会に出れば、優勝する以外は、良くても「決勝で破れる」とか「準々決勝惜負」、早めに負けてしまうと「2回戦敗退」等とメディアに出ます。
先日ダウンタウンの松本が「錦織はいっつも負ける」と言っていたと聞きました(笑)。松本が錦織を本気で攻めていないのは判りますが、実際、素直な気持ちだと思います。そういう見方しかできないような伝え方になっているんです。
でも、テニス(というかスポーツ全般)は勝ち負けだけじゃない。長い1年のツアーで勝敗がどうなのかはランキングが良く示してくれますが、それだけで計れるほどテニスは浅くもない。
野球にはものすごく沢山の選手やチームの良さを測る物差しがあります。野球を殆どみないボクでも、野手1人とっても、打率、ホームラン数、1、2、3塁ヒット数、盗塁数、得点圏内打率等々、大量のスタッツがあります。細かな偉業を評価してくれます。
最近テニスも1試合の中でのスタッツが出るようになりましたが、あくまで1試合の中のスタッツ。シーズンを通してではありません。だからこそ、なおさらテニスでは、選手がどんな技術的、身体的、精神的なことに取り組んでその試合にのぞんでいるかが重要になるんです。
それもあってATPやWTAでは試合後の結構長いインタビューが義務になっていたり。最近はネットでインタビューが観られる機会が増えましたが、TVでインタビューが放送されることは超トップぐらいで殆ど稀。そしてフューチャーズやチャレンジャーではそんなインタビューもありません。選手自身から伝えるしかないんです。
そしてまた特にテニスは、映像だけでは分かりにくい部分が沢山ある競技です(これはまた後日詳しく書きたいです)。その見えない部分を選手の状態を少しでも知ることで、本当の戦いがより深く見えてくると思うのです。
もちろん、相手のある勝負の世界なのである程度の情報は隠す必要も出てくるかもしれません。少し時間差で伝えたり、色々方法はあると思うので、それはそれぞれが自分にあった方法をとってくれればい良いと思います。
今年2018年全豪のインタビューでフェデラーもスポーツにおいてストリーテリングは重要だと言っていました。実際、試合直後のオンコートでのインタビューも10分近くのものもありました(試合が早く終わったのかもしれませんけれど)。ストーリーテリングはいい日本語訳がみつかりませんが、言葉通り(裏に隠れた)ストーリーを話すことです。
ファンはそうやって選手の状態を知った上で試合を観ると、選手があくまで「人」であり、その人が色んな課題をもって戦っていることが知れ、ますます試合は面白く観られるし、選手への尊敬や信頼も増してますますファン度が高まります。
日本人男子選手は伝える頻度が少なめな傾向にあって、杉田祐一選手も例に漏れずではありますが、ただ、例えばこちらのように、伝える時は正直に自分のテニスや身体の状態、そしてテニス全般に対する考え方などを伝えてくれていて、ファンとしては嬉しい限りです。
何を言っても、書いても、文句を言う人は言うし、逆にそれを知ることでより応援してくれる人も沢山出てきます。それこそがプロの選手ということだと思います。言ってはいけないことなんて何にもないです。
また日本人女子の選手は、日々のツアー生活を見せてくれる人は多い気がしますが、肝心なテニスになると多くを語らない傾向がある気がします。そんな中、日比野菜緒選手は最近のブログ記事「メッセージ」では選手の心の話をしてくれていますし、その前の「今後の予定」では身体の状態や、まさにここに書いていることを竹内映二さんの「人は結果に感動するのではなく、その過程に感動するのだ」という言葉で紹介してくれています。その他でもものすごくストレートの色んなことを語ってくれています。こんな風に伝えて欲しいのです。
引退してしまいましたが、伊達公子のブログも選手だった時は試合の中での細かい勝負の話から身体、気持ちなどを赤裸々に語ってくれていました。
選手によっては文字にするのが苦手だったり、カメラに向かって話すのに慣れない人もいるかもしれません。そんな場合は自分でやらなくても、近い人に話して文章にまとめてもらっても良いし、話しやすい相手にインタビューしてもらってその様子を撮影しても良いし、やり易い方法を見つければいいと思います。
最近便利になった色々な方法で、ぜひプレーの後ろに潜む色んなことを伝えて欲しいと思います。(N)
日比野菜緒選手のパワフルかつバラエティーに富んだプレーはもちろんのこと、自分のことを伝えるその姿勢は、プロテニス選手として、また人として、無茶苦茶尊敬します。ボクは大ファンです。
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source : アメリカ・テニス日記 from ロサンゼルス・カリフォルニア