「テニスは無意識的な運動で構成されている」の続きです。
上達は運動を無意識化すること-----つまり、飛んで来るボールに対して「身体が勝手に動く状態」になることが「上達」なのです。
上達は運動を無意識化すること-----つまり、飛んで来るボールに対して「身体が勝手に動く状態」になることが「上達」なのです。
●どこにでもある無意識的な運動
最初に「テニスは無意識的な運動で構成されている」などと大げさな言い方をしましたが、これは別に特殊なことではなく、誰もが日常的にやっていることです。
無意識にやってしまうこと、無意識にできることは、日常生活のいたるところにあり、誰でも何気なく普通にやっています。
その中でも、最も代表的なのは、歩くという行為でしょう。
道を歩くときに「右足と左手を前に出して、次に体重移動を・・・」などと考えながら歩いている人は、世の中にはあまり居ないと思います。
特に注意しながら歩かなくても、手の振り方や足の出し方を間違えたりすることはないはずで、歩くことを意識せずに他のことを考えながら移動するという行為は誰でもできます。
でも、この歩くという行為は、運動としてはそう簡単ではありません。
二本足で歩くのはとても不安定でバランスを維持するのが難しいので、常に転倒の危険がつきまとうからです。
ロボットに人間と同じような二足歩行をやらせるのには相当の年月が必要だったようですし、現在でも、人と同じように軽快に歩くロボットはあまり見かけません。
人の場合も、生まれてすぐに歩けるわけではなく、歩けるようになるにはある程度の訓練期間が必要で、その間の練習によって、コロコロとすぐに転んでしまうような未熟な歩行から、なめらかなで安定した歩行へと移行していきます。
このように、「繰り返しやることで、難しい運動を考えずにできるようになる」のが「運動を無意識化する」ということで、それがすなわち「上達」ということです。
そして、こうしたことは日常生活の中に数多く含まれます。
車の運転なども、最初は教習所で脱輪やエンストを繰り返しながら練習しますが、免許を取ってある程度熟練すれば、考えごとをしながらでも目前のカーブの大きさに応じてハンドルやブレーキの操作が適切に行えるようになります。
自転車の場合も同じで、カーブを曲がる際に「身体をどれくらい傾けようか」などと考える人は居ないはずで、傾きを意識しなくても、適切な角度で身体を内側に傾けながら曲がります。
でも、そんな状態になるには練習が必要で、何かの下地がない限り最初からできる人は居ません。
楽器の演奏なども、最初は指の動かし方を考えながら音を出すため、音がつながらずに曲にならないのですが、練習を積んで上達すれば、メロディーを思い浮かべるだけで指が動くようになり、なめらかに演奏できるようになります。
●何度も繰り返せば考えなくてもできるようになる
どのケースにも共通するのは、「いちいち考えなくてもできるようになるまで、繰り返し練習する」ということです。
人の脳には「複雑なこともたくさん繰り返せば、考えなくてもできるようになる」という機能が備わっています。
これは「身体で覚える機能」と言っても良いでしょう。
この「身体で覚える機能」がもたらす一番のメリットは、「素早くできるようになる」ことです。
ゆっくりであれば、かなり難しいことでも考えながらやることができるのですが、考えながらやっていると、いつまでたっても実行スピードが上がりません。
そして、世の中には、考えながらやるスピードでは間に合わないことがたくさんあります。
先ほどの車の運転でも、カーブにさしかかったときに「えぇーっと、ブレーキを軽く踏んで時速40kmまで減速して、ハンドルは40度くらい切って・・・」などと考えながら運転していたら、操作が間に合わずに道から外れてしまうでしょう。
楽器演奏の場合も、考えながら弾いていたらなめらかなメロディーにはならないでしょう。
難しいことを素早くやらなければならないときには熟練が必要で、熟練するまで練習が必要なのです。
●無数のパターンを覚えこむことが必要
テニスでも、やっていることが複雑すぎるので、飛んで来るボールに対して「身体が勝手に動く状態」にならないとプレーのスピードに追いつきません。
そして、「身体が勝手に動く状態」を手に入れるために、練習して身体に覚え込ませるわけです。
ですから、考えなくてもできるようになることが練習の目的であり、「無意識的に身体が動いてしまう」という状態になれば上達したと言えるでしょう。
ただ、先述したように、テニスでは状況に応じて毎回適切に動きを変える必要があるので、覚えるべき状況パターンが無数にあります。
そのため、経験を重ねて数え切れないくらい打たないと、いろいろなパターンを身体に覚え込ませることができません。
なので、うまくなるのに時間がかかるわけです。
●「わかる」と「できる」は大違い
連続写真や動画、あるいはプレー中の偶然などでショットのコツがわかると、それがすぐにできそうな気がするのですが、実際には、「わかる」のと「できる」の間にはとても大きなミゾがあるので、コツがわかったからできると思うのは単なる錯覚であることが多いようです。
動きのしくみを理解して何度かできたからといって身体で覚えたことにはならないので、考えてやらなくてもその動きが勝手に出てくるようになるまで、言い換えれば、無意識的にできるようになるまで、同じことを何百回も繰り返す必要があります。
このように、「できる」というのは「運動を無意識化すること」であり、そのためには練習を積むことが必要なので、「繰り返しやる」という過程をパスして上達することはできません。
上達への手軽なショートカットは無いわけです。
次は、「打ち方を直すことが上達への道だという誤解」です。⇐クリック
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2003年の開始から8,000名以上の診断実績。
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source : 合うテニスラケットを選んで戦力アップ