2015年9月2日水曜日

テニスプレイヤーがコート上で無意識的にやっていること

ここまで書いてきたように、「打つ前のボールの状態に合わせたスイング調整」には、大まかに分類しても、以下のような4つの要素があり、それぞれの要素についてのスイング調整が適切に、かつ、複合的に行われないと、飛んで来るボールをまともに打ち返すことができないということが、おわかりいただけたと思います。

1.打点の高さに応じたスイング軌道の変化
2.ボールのスピードに対応するためのスイング調節
3.ボールの移動方向に合わせたスイング調整
4.飛んで来るボールの回転に合わせたスイング調節

ここまで読んだだけでも、これらの4つのスイング調節を同時に、かつ、複合的にやるのは至難のワザだということがわかります。

「ホントにそんなことをやっているのだろうか」と疑われる方も居るのではないでしょうか。
でも、これらがきちんと行われていないと狙ったところにボールが飛ばず、打ち合いは続きません。


誤解を防ぐために付け加えますが、ここまで書いてきたことは、「これから努力して、こういうことをやらなければならない」という課題の提案ではなく、「すでに、こういうことをやりながらボールを打っている」という事実の解説です。

そして、この「すでにできている状態」を手に入れるために、これまで数え切れないほどボールを打って、多くの失敗と成功を繰り返してきたのですが、その、すでに獲得してしまった「無意識的にスイングを調整する能力」は、それをやっているときの自覚が実行時に生まれないので、その能力の存在を忘れてしまうのが普通です。

もしも、プレイヤー自身が「無意識的に打つ能力」の稼動状況を自覚していたら、それは「無意識的に打っていない」ことになるので、上達の過程としては「まだまだ」ということです。

高度な運動を無意識化するのが練習の目的であり、そこが上達のゴールなので、打つ前のボールの状態に合わせた複雑なスイング調整など、「自分はしていない」と思える段階にならないと、「打つ前のボールの状態に合わせた複雑なスイング調整」がきちんとできていないわけです。

なので、「無意識的な運動でプレーしている」などと言われても、納得する人が居ないのは、ある意味仕方がないと言えるでしょう。

でも、これまで書いてきたように、実際問題として、そうした調整が適切に行われていなければ、ボールが適切に飛ぶことは物理的にあり得ないので、上級者にとっては不本意かもしれませんが、「運動が無意識的に行われていること」については、ぜひご納得いただきたいと思います。

●スイングをいつ決めるのか

納得しきれない方も多いとは思いますが、このまま話を続けさせていただきます。

それでは、「打つ前のボールの状態に合わせた適切なスイング調整」は、いつ決定されて、実行に移されるのでしょうか。

言葉を換えれば、「打つ前のボールの状態を特定できるのはいつか」ということで、それがハッキリしなければ、それに適したスイングも決まりません。

当然ですが、相手が打つ前にそれを特定するのは無理な話なので、「相手が打ってからこちらが打つまでの間」に予測することになりますが、その時間はトータルで1.5秒前後(一般レベルのストロークの打ち合いの場合)です。

こちらが打つときのボールの状態を、相手が打った瞬間に予測するのはほぼ無理なので、「相手の打ったボールがこちらに飛んで来る間に判断する」というのが現実的な対応だと思われます。

それにしても、1.5秒前後という短い時間で、飛んで来るボールを見ながら、こちらが打つ前のボールの状態を特定して、さらに、それに適したスイングを決めるのは結構忙しい気がしますが、実際には、もっと忙しいのです。

●決まらないうちに始めなければならない

なぜなら、プレイヤーには、ボールが飛んで来ている間にやらなければならない大事なことが他にもあるからです。

それは、ラケットを振るための準備動作(先行動作)です。

瞬間的にパッとラケットを振ることはできないので、ラケットを引いてボールを打つまでには結構時間がかかります。

人によって違いはありますが、身体を横に向けてラケットを引き始めるという先行動作の開始からインパクトまでの時間はだいたい1.0秒くらいです。

(※この時間をもっと短くすることはできますが、短くなればなるほど打つ前の準備が不十分になるため、しっかり打てなくなるようです。言い換えれば、スタートが遅れたという状態です。)

そして、「相手が打ってからこちらが打つまでの時間」がトータルで1.5秒だとすれば、差し引きすると、相手が打ってから0.5秒くらいで、そのボールを打ち返すための先行動作をスタートさせなければ間に合わないわけですが、その時点は相手が打った直後であり、打たれたボールがネットを越えるか越えないかというタイミングです。
TIME
ということは、こちらが打つ前のボールの状態をきちんと特定できない段階で、言い換えれば、普通であればフォアかバックかだけが見極められるくらいの段階で、スイングをスタートさせているわけです。

次のボールに対してどんなスイングが適しているかわからないうちにテイクバックをスタートさせて、そこからインパクトまでのどこかで、打つ前のボールの状態を見極めながら、それに適したスイングに変わっていくというのが、コート上で起きている現実のようです。

●身体が勝手に決めて実行

打ち合いが続いているときには、プレイヤーは飛んで来るボールに意識を集中させているのですが、その最中に、身体はそんなことをやっているわけです。

そして、その過程でプレイヤー自身が何かを決めた記憶が無い場合は、「打つ前のボールの状態に合わせたスイング調整」は自動的に、無意識的に起きているわけです。

ライジングで打つ際の面の角度や、サービスリターンの際のスイングの大きさや、スライスのボールを打ち返す際のテイクバックの位置などについて考えたり、決めたりした記憶が無い場合は、身体が勝手に決めて実行したということです。

もっとも、飛んで来るボールに対してプレイヤーが考えて何かをやろうとしても、ゼロコンマ数秒という時間では考えがまとまるわけはありません。

なので、そこで起きているのは、飛んで来るボールに対する反射的な対応だと言えるでしょう。
複雑なことを瞬間的にこなすには、頭で考えずに、練習の積み重ねで身体で覚えたことを反射的に実行するしかないわけです。


ここまで書いてきたことをご理解いただいた方は、上達のため取組を大きく変更する必要性に気づかれたかもしれません。

というのも、自分の打ち方を改善するのが上達への道だと信じている方が多いのですが、実はその取組には出口が無く、無意識的な運動が無意識的に変わることを目指さないと迷路から脱出できないからです。

以下は次項へ ⇒ 「上達しない練習」 (作成中)

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