2016年7月4日月曜日

"錦織はグランドスラムタイトルを獲れない"という風潮に対して

「錦織はグランドスラムタイトルを獲れない」

2014年全米オープンで準優勝を飾って以降、優勝はおろか準決勝にすら進めていない錦織に対して、一部でこのような意見が広がっているように感じます。

グランドスラムの前にマスターズのタイトルを、という目標もあと一歩のところまで来ていますが達成できておらず、この議論に拍車をかけています。

自分は「錦織はグランドスラムタイトルを獲れない」という意見を否定するつもりは全くありません
これは完全に個人の意見でしょうし、現在の成績を顧みればこのような意見が出てくるのは当然とも言えます。
逆に、「いつかは必ずグランドスラムタイトルを獲れる」という意見が出てくるのも自然なことでしょう

もちろん、こうした意見が「一部で広がっている」ということ自体、単なる自分の思い込みかもしれません

しかし、 錦織は決して特別な存在ではない、ということだけは忘れないでください。

錦織と同じく、グランドスラムタイトルを期待されながらもなかなか手が届かなかった選手、あるいは、未だに届いていない選手。

例えばマレー、ワウリンカ、ベルディヒ、フェレール、ツォンガ、そして、ジョコビッチもその一人でしょう。

彼らも様々な壁にぶつかりながらそれを乗り越え、そして新たな壁に挑んでいます。

しかし、マスコミはそれを充分に取り上げてきたでしょうか。

ビッグ4時代があったこと、グランドスラムタイトルが数年間に渡って4人に独占されたことを踏まえ、グランドスラムタイトルを獲ることがいかに難しいかということはある程度伝えていたと思います。

ですが、それだけでは不充分だったと自分は思います。

ビッグ4に、あるいはフェデラーとナダルの2強に挑んだ選手達の軌跡に注目してこそ、錦織の挑んでいる壁がどれほど厳しいものかというのが分かるはずです。

そして、それを乗り越えた選手がいればそうでない選手もいる、ということも改めて意識できるはずです。

その上で、錦織はグランドスラムタイトルを獲れるのかという議論に移るべきではないでしょうか

という訳で、次回からは「果てしなく長いグランドスラム初制覇への道のり」と題して、様々な選手の現在までをたどっていきます

例えばマレーです。
2012年全米でグランドスラム初タイトルを手にしましたが、初のグランドスラム決勝進出は2008年の全米までさかのぼります。
「マレーはグランドスラムタイトルを獲れない」という意見は2009年頃からささやかれていたのです。

そしてベルディヒ。
彼もまた、初のグランドスラム決勝進出は2010年のウィンブルドンまでさかのぼります
しかし、その後は準決勝進出が最高成績で、決勝の舞台には上がれていないのです。
ここがマレーとの決定的な違いでしょう。

錦織は今、マレーになれるか、それともベルディヒになるかの瀬戸際にいると自分は思います。
決してベルディヒを軽く見ている訳ではありません。

グランドスラムでビッグ4全員に勝利したことがあり、3セットマッチでも複数回の勝利経験があるベルディヒ
それにもかかわらずグランドスラムを獲れていない彼の現在までを振り返ることは、間違いなく意義のあることだと思います。

初回はベルディヒ、第2回はマレー、その後もフェレールやワウリンカ、ツォンガなど、自分の知識の中で可能な限り多くの選手に触れていきたいと思います。

ウィキ〇ディアを見れば分かることだ、と思われないよう全力を尽くしますのでどうぞご期待ください。


ここから先はマスコミに対する批判をもう少しだけ。

グランドスラムタイトルに対する報道が不充分だったと批判しましたが、自分が最も警鐘を鳴らしたいのが、マスコミの「錦織特別視」です。

2014年全米。
決勝に進出した錦織とチリッチの試合を前に、マスコミは口々に「錦織有利」をアピールしました。
その根拠が、チリッチは格下で、過去の対戦成績も錦織がリードしているというものでした。

決勝まであのような勝ち上がり方をした2人に格上、格下の議論は無意味だったということは以前も言いましたが、これはまだまだ序の口でした

その後のグランドスラムでは毎度のように「錦織優勝のチャンスあり」との報道がなされ、その根拠は大会1か月前の段階でのオッズであったり、日本人のテニス関係者1人に対するインタビューであったり、挙句の果てには「怪我をしていることが逆に有利にはたらく」などという無茶苦茶なものまでありました。

こうした一種の偏見報道が、数多くの人に「錦織は特別だ」という意識を作り出した気がしてなりません
何より怖いのは、こうした意識を持った状態で「錦織敗戦」の事実を知った人が「錦織は大したことない」という結論に至ってしまうことです。

自分がブログを始めたのはこのようなことを危惧したからでした。
しかし、今までを振り返ってみるとその信念に沿って活動していたか、自分でも疑問です。

そこで今後の活動方針についてです。

多忙によってツアーを満足に追えていないこともあり、各大会の展望予想とランキング試算についてはしばらくの間休止とさせていただきます。

今後は先ほど紹介した「果てしなく長いグランドスラム初制覇への道のり」を始め、「チャレンジシステムの仕組みとホークアイ」の続編、マッチスタッツについてなど、ツアーに関係なく書けるものを取り上げたいと思います。

ランキング試算などはかなりの需要があることも重々承知していますが、今一度原点に立ち返る覚悟で優先順位をつけさせていただきました。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


 


source : テニスブログ Hawk-Eye