◆10回目のモデルチェンジ
ウイルソンの伝統的なモデルとも言える「PRO STUFF」でさえ、フェデラーの要求に応じて年々スペックを変えてきている中で、2002年に発売された「HYPER HAMMER 5.2 95」からスタートして、「TOUR 95」✕6モデル、「STEAM 95」✕2モデル、そして、「BURN 95」の2作目として発売された今回の「BURN 95CV」まで、フェースサーズ:95平方インチ、フレーム厚:22mmフラット、全長:27.25インチ、ストリングパターン:16✕20という外形スペック数値の全てが不変のまま10回ものモデルチェンジを重ねてきたモデルは、ウイルソンだけでなく他のラケットブランドを見渡しても見つけ出すことはできないでしょう。
でも、こうした外形スペックの変更無しで積み重ねられたモデルチェンジを経験してきたこのモデルは、「外形スペックを変えなくてもラケットの特性は次々と変えていくことができる」ということを示した好例と言えるかもしれません。
◆ボクトツな性格
このシリーズは元々はシャープな弾き感が特徴的だったのですが、前作の「BURN 95」からグロメットの設計変更によって鋭角的な弾き感は影を潜めて、マイルドなインパクト感に変わっています。
このモデルのパフォーマンスを一言で表現すると、錦織モデルというハデ目な印象とは異なり、「ボクトツ」という言葉がピッタリな気がします。
余計なことや特に気の利いたことは言わず、でも、任されたことはキッチリ間違いなくこなすというキャラクターイメージです。
インパクト感はマイルドで、鋭角的なゴッツン感は感じられないので、無造作にフェースをボールにぶつけていける安心感のようなものがあります。
そういう点では、強いスピンをかけて打つより、フラットドライブで押し込んでいくようなスタイルに向いていると思われます。
プレイヤーのやったことが実直に打球に反映されますが、それ以上のことはしてくれないタイプで、プレイヤーのスイングパワーどおりの打球スピードが出ますが、プラスアルファのアシストはこのモデルに期待するべきではないでしょう。
◆疲労が軽減されるラケット
「【疲れない!!】と謳うには理由がある」とウイルソンのWebMagazineには書いてあります。
モデル名にも有る「CV=カウンターベイル(Countervail)」という新素材を使用して衝撃吸収性を高めたことで筋肉疲労が軽減されるという説明です。
実際に疲れないかどうかはプレイヤー次第のことなので、こんなふうに言い切ってしまうのはかなり乱暴な気がしますが、このモデルの衝撃吸収性が高いのは間違いありません。
打感はマイルドで、アッサリはしていないものの粘っこさはなく、腕に残る衝撃感はかなり少ないと言えます。
ただ、「疲れない」=「プレイヤーに楽をさせてくれる」と考えるのは大きな間違いです。
もともと、フェースサイズ:95のラケットがプレイヤーに楽をさせてくれるはずはありません。
ですから、正確に言うなら、「ガンガン積極的に攻めていく際に負担を軽減してくれる可能性がある」ということだと思います。
◆スイングウェイトは重め
これは前作から継承されていることですが、スイングウェイトのバラツキ範囲については、かなり重めな部類に入ります。
なので、相手の強打に対してムダに力む必要はないでしょう。
打球衝撃が小さい理由の一つには、このスイングウェイトの数値傾向の影響も有ると思います。
同じ理由で、95平方インチというフェースサイズを見て、このモデルを飛ばないラケットだと思い込んでしまうと、実際に打ってみて意外に感じるかもしれません。
普通に振れば普通に飛びます。
このラケットのスイングウェイトを負担に感じないプレイヤーにとっては、神経質な挙動がなく、コントロールに安心感を持てるラケットだと言えるでしょう。
イヤミなところがなく嫌われにくい性格で、そういう点でも「ボクトツ」だと言えます。
◆スイングウェイトが重い場合に出る症状
スイングウェイトの軽いラケットは打球衝撃が強くて打ち負けやすいので、プレイヤー自身が弊害を感じやすいのですが、スイングウェイトの重いラケットは、打ち負けにくいというメリットを感じて意外にスンナリ使えてしまう傾向があります。
でも、プレイヤーによっては、その負担がプレー上の弊害として症状に出ることがあります。
「ボレーの取り回しがモタつく」というのは一番わかりやすい症状ですが、テニスワンのラケットドックでは以下のような症状が見られるケースが少なくありません。
「ストロークでポジションが下がり気味になる」
「高い打点から打ち込むケースが減ったり、そういう打点で打つことが不得意だと思い込む」
この二つの症状は、スイングウェイトが重いために「上で振るより下で振ったほうが楽」と「素早く動かすのがイヤ」という二つの理由からもたらされるものです。
そして、こうした症状は、自分では気付かないうちに起きている可能性が高いのでご注意ください。
◆硬く張りすぎる傾向も
また、スイングウェイトの重いラケットはガットの張上が硬すぎてもその弊害を感じにくいので、硬目に張るケースが多いのですが、張りが硬すぎると柔らかいインパクトのショットコントロールが難しくなり、ショートラリーが窮屈に感じます。
ショートクロスやドロップショットのショット選択が頭から消えている場合はこのケースで、強打一辺倒の一本調子の展開になってしまいます。
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ラケット選びについての45タイトルの記事が満載!
ガットについても9タイトルの解説があります。
テニスワンのホームページ「テニスラケット選びのノウハウ集」のページヘ
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残念ながら、ラケットについてどんなに良くわかっても戦力アップにつながるラケット選びはできないでしょう。
なぜなら、ラケットの良し悪しはプレイヤーとの相性で決まる問題なので、ラケットのことがわかっても、使う側のプレイヤーの運動特性がわからないとミスマッチになるからです。
なので、自分に合うラケットを選ぶにはラケットフィッティングが必要です。
source : 合うテニスラケットを選んで戦力アップ