この写真はロサンゼルスのテニス強豪私立 USC のコートでのものです。USCと言えば、今ランキングを上げて来ているスティーブ・ジョンソンの出身校です。
USCは日本で言えば慶應というイメージで、お金がたっぷりある印象の大学です。それももちろん助けていると思いますが、メインスタジアムの全コートには写真のようにプレイサイトというテニスデータ解析システムが設置されています。コートのコーナーにはカメラ、審判台の横には大きな端末が見えます。
プレイサイトは日本にも2015年末に上陸しているようですね。TTCで導入されたとニュースになっていました。
今時、プロの大会のメインコートではSONYのホークアイがボールのイン/アウトを判定してくれます。そして大会をTVで観ていれば、選手の打った全球の位置や各ショットの統計等、かなり細かいスタッツが出てくるのが当たり前になりました。そしてもちろんトッププロは、TVには出てこないものも含めて、そういったデータを元に相手の傾向や癖を読み取り、試合での作戦に生かすのが当然な戦略になっています。
そしてそれがもう大学レベルまできているのです。
ちょうど少し前に日本でソニーはテニススクールと提携して、スマートテニスセンサー+分析端末を導入しましたね。使ったことはないですが、ラケットのデータとビデオ画像を繋げてレッスンに生かす話が中心で試合のデータ分析の話はあまり出てませんが、もちろんそういった解析もできるんだと思います。
かつてラケットがウッドだった頃はテニスは今ほどフィジカルではなかったと言われています。当時フィジカルの強さももちろん武器の一つですが、スイートスポットに確実に球を当てる正確さを持っている選手には勝てなかったりと、テニスの色々な側面がそれだけでトップになれるほどの武器になりました。だからこそ色んなプレースタイルが混在していました。
それからラケットがグラファイトになり、ガットがポリになって、パワーは基礎中の基礎の時代になりました。フィジカルやパワーは無いけど他がすごい、というトップ選手はいなくなりました。それだけに皆同じようなプレイに見えたりもします。
そんな時代を経たのち、次はやっぱりデータ分析合戦が当たり前の時代になってくるんじゃないかという気がします。もちろん試合だけではなく、練習での効率的上達のため、そして身体づくりのためにも。
スポーツはあくまで身体とそれが生む技術の勝負で、直接使う道具ならまだしも、データや分析結果は二次的と思うかもしれません。というか今までの感覚で普通に考えればそうです。
ただ最近、人がしてきた仕事をこれからAIが肩代わりする、と毎日のように耳にします。そして、5〜10年以内にホワイトカラーワークの30〜40% がAIに取って代わるという話もあるくらい、と仲間のワトソン通に聞きました(笑)。
自動運転の車が開発され、実際に試験車が公道を走っていることを考えると、この先車の良し悪しは物理的なモノとしての車の良し悪しではなく、データをいかに自動運転技術に反映させるかがカギになってくると思います。つまり、モノづくりの正確さと製品のクオリティーで勝負して来た日本の車メーカーは、車を測る物差しがデーターによる運転技術&運転サポートに変わってしまうことで、今までのようにあぐらをかいているわけにはいかなくなります。
比較的小さな範囲(コート)で、1試合中どころか、1ポイント中でさえ同じ行為を何度も繰り返すテニスは、他のスポーツ以上に確率が現れるスポーツです。だからこそその確率を大きく揺さぶるメンタルも勝敗を大きく左右する要因になります。つまり、スポーツの中でもデータがプレイに影響する度合いが大きいのです。
これから集まるデータが増えるにつれて、それをどうテニスのプレイや練習に生かすか、色々な理論がでてくると思います。TVの解説を見ているだけでも、解説者がデータをみて「こういう傾向になっているからこうするべき」という意見がでますからね。視聴者にわかりやすいデータを出しているだけで、もっと細かく有益なデータ&分析は既に色々あると思います。
AI化は確実に進んでいます。古い考え方で「テニス(スポーツ)には関係ない」なんて思わず、この先の大きな変化の波に取り残されないように(笑)、早いうちにこんなシステムを当たり前に使うようになっておきたいと思っています。(N)
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source : アメリカ・テニス日記 from ロサンゼルス・カリフォルニア