2016年4月25日月曜日

~突きつけられた現実 錦織圭は新たなステージへ~ バルセロナ決勝回顧

「攻めが良ければ勝てる」から「あと一歩何かが足りない」へ

これが今回の試合を振り返って自分が感じていることです。
批判覚悟で書きますが、決して悲観的な意味ではなく、これは逆に喜ぶべきことだと思います。

先に断っておきますが、この記事では今回の敗因を探ることはしません。
簡単に敗因が見つかるような試合ではなかったと思うからです。
錦織が負けたとき、私たちは躍起になって悪かったプレーを探そうとしますが、完璧なプレーなど存在しないのも事実です。

ですから、今回のように明確な敗因が見つかりそうにない試合に関しては、自分はそっとしておこうと思います。

という訳で、試合の振り返り自体は短めにいきます。


錦織は完璧な攻めを見せた

試合の立ち上がりから錦織は非常に集中していました。
第1ゲーム、速いテンポで攻め続ける強気のテニスを見せると、続くサービスゲームではファーストサーブを全て入れてラブゲームキープに成功します。

直前の展望予想では絶好調でない限りむやみに攻めるべきではない、と書きましたが、まさしく絶好調でした。
ひたすらに攻め続ける選択は間違っていなかったと思います。

しかし、ナダルの粘りが本当に素晴らしかった。
ブレークポイントを握られてからの集中力は恐ろしいもので、錦織はことごとくはじき返されてしまいました。 

第1セットは本当にどちらが取ってもおかしくなかったと思います。
本人はミスを悔やんでいましたが、攻めの姿勢があってこその内容だったので、仕方ないものだったと思います。

第2セットもブレーク合戦となる中で、本当に最後まで粘りに粘ったのですが惜しくも届かず。
ストレート負けという結果でしたが、スコアでは語りつくせない試合だというのを誰もが感じたはずです。

突きつけられた現実

ここからが本題です。

錦織のプレーは本当に素晴らしかった。
これは試合後の錦織の表情を見ても感じられます。
悔しさも表れていますが、一方で自分のテニスに手ごたえを感じた清々しい表情でもありました。

しかし、それでもナダルに勝てなかった。
ほぼ完ぺきなプレーなのに、あと一歩何かが足りない。

確かに悔しいことですが、こういう負け方は錦織が新たなレベルに達したことを意味すると感じています。

思い出すのが2014年の全豪オープン4回戦。
攻めのテニスでナダルを脅かし、それでも1セットも取れなかった試合です。

そして、続くマドリード決勝でもナダルを追い詰めながら今度は体が悲鳴を上げます。

この2敗を乗り越えて掴んだ昨年のモントリオールでの勝利によって、「良い攻めができれば勝てる」ことを証明しました。

そこで訪れた今回の敗戦。
決してマドリードやモントリオールの時に比べてプレーレベルが下がったわけではないのに(個人的にはむしろ上がったと思っている)負けてしまいました。

これまではどれだけ良いプレーをするか、というのが論点だったわけですが、今後は良いプレーをしつつ、どうすれば勝ちきれるのかを考えて挑戦することになるのです。

同じような道をフェデラーも、ジョコビッチも通ってきたわけです。

全仏でナダルに幾度となく倒され、2008年には遂にウィンブルドンで敗れ、2009年全豪では大粒の涙を流したフェデラー。
同様に、前哨戦のマスターズでは勝てるのに、2012年から2014年まで全仏では敗れ続けたジョコビッチ。

2人とも、「あと一歩何かが足りない」敗戦を幾度も繰り返し、強くなった選手です。
ジョコビッチの「ロジャーやラファがいてくれたから自分はここまで強くなれた」という言葉がそれを物語っています。

「あと一歩」を追求する新たなステージに移った錦織。
今後も同じような敗戦を繰り返すかもしれません。
しかし、その度に強くなってくれることでしょう。

そして、そのきっかけを作ってくれたナダル。

両者のさらなる活躍を期待しましょう。


source : テニスブログ Hawk-Eye